糖尿病学会の取材でフロリダに出張し、決勝リーグの日本-パラグアイ戦はホテルでの観戦となった。試合開始は、フロリダ時間で午前11時だった。日本は真夜中なので、仕事の電話はかかってこない。そこで、ポテトチップをつまみに缶ビールを飲みながら、私はホテルの一室でジャパンブルーのにわかサポーターに徹することにした。
そもそもサッカーは、熱狂的なファンである妻に誘われて見るようになった。そこで私は試合前のセレモニーが始まると、テレビの前で緊張のためにおしっこを漏らしそうになっているに違いない家内に電話をした。
-やっぱりこのスターティングメンバーなんだね
-なんか、文句あるの
-あっいえ、ただ同じなんだなと...
-それでいいじゃないの
彼女は緊張どころか、殺気立っていた。そこで、いったん電話を切り、ハーフタイムにまた電話をした。
-日本、なかなかやるじゃないの
-でも、パスがうまく回らないし、押されてるって言ってるよ
-だれが?
-解説者
-そんなこたあないだろう、まあ五分五分っていうか、手こずっているのは相手だろう。
-でも、このままじゃ不安だなあ...
正直のところ私は驚いていた。アメリカのテレビのアナウンサーと解説者は、日本を終始褒めていたからだ。
-実に、よく訓練されているチームですね。
-タフで、よく走る。それにスマート(頭がいい)。非常に統率がとれている。だから、パラグアイはかなり苦戦しているね。
もちろんそう言いながらも日本にばかり肩入れするわけではなく、パラグアイのよいところは素直に賞賛していた。
妻との会話でわかったことは、どうも日本の放送では否定的な言動が多いということだった。思い返せば、日本の解説者は普段から短所ばかりを指摘する傾向がある。ここはこうするべき、あちらをああしたほうがよいなどと持論を展開することも多い。もし「自分たちは専門家で、視聴者がわからないところを教える立場にある」とでも思っているのなら、それは大間違いだ。なぜなら、私たちは勉強をしたいのではなく、楽しむためにテレビを見ているのだから。
その点、アメリカのサッカー放送は実に楽しかった。視聴者の気持ちを邪魔せず、むしろ心地よい高ぶりをさらに押し上げてくれるような話しっぷりだった。
-タナカ(闘莉王のこと)は、実にいいところでプレッシャーをかけてきますね。
-ナカザワが後ろをしっかり抑えているからね。ナカザワはずいぶんベテランでしょ。
-はい、ジャパンの代表で100キャップを超えていますね。
-No wonder !(やっぱりね)
そして、あわやゴールというときは、
-Mooom ! Brilliant header !! He's the most dangerous player in this field.
とくる。淡々と、自分たちも素直に楽しみながら、実況が続くのである。
そんなことを思い返しながら、今週は全英オープンを出張先の京都で見ている。
世界のアオキにマイクを持たせて、ラウンドレポーターをさせるテレビ局の無神経さにはやや腹が立つが、彼が、
-リョウは最高の球を打ったのに、ディボットの上ですよ。ついてないね。
と言ったコメントがうれしかった。視聴者に余計な解説はいらない。
廣川亜太郎(ひろかわ あたろう)
医療ジャーナリスト 1951年生まれ 横浜在住
全米生活25年、その間にゴルフ場支配人を経験、30代後半に北カルフォニア公認ハンデキャップ6
現在はハンディキャップ14。「スコアは、ゴルフの神の思い召し」が信条。
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