-フランス-

2009年10月、『ミシュランガイド京都・大阪2010』の日本語版が出版された。

2008年には『ミシュランガイド東京2009』が出され、三つ星を獲得した高尾山が夏休みの原宿竹下通り並みの大混雑となった。もちろん高尾山は観光地であってレストランではない。

ミシュランと言えば、レストランの格付けばかりが取り沙汰されるが、グルメ本ではなく、あくまでもガイドブックである。ちなみにミシュランはタイヤ会社のミシュランだ。自動車旅行者のためにつくったガイドブックがミシュランガイドのはじまりである。

ミシュランガイドに出ている国や都市は、多くのフランス人観光客が訪れるところだ。たとえばスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼道沿いには、ミシュランのステッカーが入り口に貼られたレストランが多い。掲載年の書かれたステッカーは、ミシュランガイド掲載店の証しなのだ。何年も続けて掲載されている店には何枚も貼られている。

『サン・ジャックへの道』(フランス語のサン・ジャックは、スペイン語ではサンティアゴの意味)というフランス映画が撮られるほど、フランス人巡礼者は多い。巡礼道はもちろん都市だけを経由するわけではなく、麦畑の中にある小さな村も通る。

そんな辺鄙なところにさえ、ミシュラン掲載店はある。巡礼道沿いでは掲載店は珍しくもなんともなく、ミシュランに掲載されることがそんなにありがたいものとも思われていないようだ。

ミシュランガイドとはあくまでもフランス人によるフランス人のための格付けなのだ。掲載店にフランス人客が訪れるようになるのならまだしも、日本人客が増えるのはよくわからない。

フランス料理のソースがやたらと凝っているのは、元来は傷みかけの素材の味をごまかすためだった。もずくもなまこも食べられないに違いないフランス人調査員に、新鮮な素材の味を生かした日本料理のよさがわかるとはとても思えない。というか、わかってたまるか !

もちろんフランス人に言わせれば、「日本人にフランス料理のよさがわかってたまるか ! 」なのだろうが、そこらへんはお互い様だ。フランス人がどんな評価を下そうがかまわないが、その評価を日本人がありがたがることが不気味でたまらない。同胞の舶来贔屓というか、おフランスかぶれがどうにも我慢ならないのだ。

フランス人をはじめとする外国人と日本人のセンスは、相反することもあれば、相通じるものもある。日本ではマカロンというフランス菓子がちょっとしたブームである。和菓子のように小さくて目にも鮮やかな可愛らしいお菓子だ。老舗和菓子屋とらやの唯一の海外直営店はフランスのパリにある。

パリ店は1980年開店だから、30年近くもパリジャン、パリジェンヌに愛されていることになる。パリを選んだとらやの選択は正しかったと思う。他の都市では和菓子のよさは理解されなかったかもしれない。フランス人が食への探求心を持つグルメであるのはたしかである。

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ナポレオン曰く、ピレネーを越えれば、そこはアフリカ。

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片岡恭子(かたおか・きょうこ)
1968年、京都府生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。同大学図書館司書として勤めた後、スペイン留学。さらに3年に渡って中南米を放浪。ベネズエラで不法労働中、テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHK『地球ラジオ』にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行雑誌『格安航空券&ホテルガイド』で「バッカー列伝」を連載開始。その後まもなく日本語講師アシスタントとしてフィリピンに滞在したのがきっかけとなり、『地球の歩き方 フィリピン』を編集、執筆する。現在は雑誌記事やガイドブックなどを執筆するかたわら、阿佐ヶ谷LoftAで『旅人の夜』という旅イベントを主催している。2011年現在、44ヶ国を歴訪。世界遺産にも詳しく、2007年8月に放送されたNHK『プレムアム10』「プロが選ぶ世界遺産ベスト30」に出演し、フィリピンの棚田を紹介した。中南米、フィリピンを得意とする秘境者(ひきょうもの)として活躍中。

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