-中国-

人口約13億3630万人と日本の10倍、面積約960万平方キロメートルと日本の25倍の中国。この広大な国のいったい何について語ろうかと考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが春節である。それほど、中国の正月である春節は強烈なのだ。移動祝祭日であるため、今年2010年は2月14日だ。

東京のコンビニエンスストアは、毎年春節の時期に人手不足に悩まされる。中国人のアルバイトがこぞって里帰りしてしまうからだ。このときばかりはいつも働き者の中国人も帰省して、故郷で家族水入らずの時間を過ごす。日本の正月と同じで誰も働きたがらない。

コンビニの店員にこんなに中国人が増えたのはいつからだっただろうか。気がつけば、ちょっと拙い日本語を話す店員が、「ちょう」、「おう」などの名札をつけてレジに立っていた。そして、同じくいつのまにやら、都心はインド人経営のカレー屋だらけになっていた。

人口の減り続ける少子化の日本に、中国、インドからあふれた民が日本に上陸し続けている。ちなみにインドの正月、ディワリーは毎年10月か11月のこれもまた移動祝祭日。2009年は10月17日だった。正月は世界一律ではないのだ。

「中国人は春節に月餅を食べる」と勘違いをしている日本人も多いようだが、月餅は中秋節、つまり中秋の名月を見ながら食べる高級饅頭だ。春節に食べるのは餃子。さすが中国である。年越しそばならぬ、年越し餃子なのだ。日本では焼き餃子が一般的だが、中国でよく食べられているのは水餃子だ。

日本の正月と中国の春節の決定的な違いは、正月が静かなのに対して春節は騒がしいこと。日本では除夜の鐘の響きに厳かな気持ちで耳を傾けるが、中国では魔除けの爆竹を大量に鳴らすのである。

その爆音たるや、これは中国で実際に体験したことがなければわかるまい。耳がしばらく聞こえにくくなるくらいならいいが、そのすさまじさは生命の危険を感じるほどなのである。不慣れな日本人にとっては、めでたさよりも恐怖が先に立つのだ。

春節前に広州の雑貨の卸屋街に行ったことがある。見るからにめでたい赤と金の飾り物のそばには、大量の爆竹が売られていた。みな春節を迎えるために先を争うようにして抱えきれないほどの爆竹を買っている。

広州では庶民の足は地下鉄なのだが、車内への火薬の持ち込みは禁止されている。とはいえ、実際に徹底的に取り締まるのも難しい。しかも、卸屋街は地下鉄の駅のすぐそばにある便利な立地なのだ。というわけで、春節前の広州の地下鉄に乗るのは、ある意味、命がけである。

春節に爆竹を鳴らすのは中国だけではない。台湾やシンガポールはもちろん、世界各国にある中華街でも爆竹は必要不可欠だ。

ただし、日本を含む先進国にある中華街では、爆竹の量がやや控えめであるような気がする。いかにも中国的な、騒々しくてちょっと危険な春節を楽しむには、大陸に乗りこむのが一番である。

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春節の買い物客でにぎわう広州の問屋街

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片岡恭子(かたおか・きょうこ)
1968年、京都府生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。同大学図書館司書として勤めた後、スペイン留学。さらに3年に渡って中南米を放浪。ベネズエラで不法労働中、テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHK『地球ラジオ』にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行雑誌『格安航空券&ホテルガイド』で「バッカー列伝」を連載開始。その後まもなく日本語講師アシスタントとしてフィリピンに滞在したのがきっかけとなり、『地球の歩き方 フィリピン』を編集、執筆する。現在は雑誌記事やガイドブックなどを執筆するかたわら、阿佐ヶ谷LoftAで『旅人の夜』という旅イベントを主催している。2011年現在、44ヶ国を歴訪。世界遺産にも詳しく、2007年8月に放送されたNHK『プレムアム10』「プロが選ぶ世界遺産ベスト30」に出演し、フィリピンの棚田を紹介した。中南米、フィリピンを得意とする秘境者(ひきょうもの)として活躍中。

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