インドネシア

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フィリピンのボホール島でやっと見られたスラウェシメガネザル

 ダーウィンの進化論で知られるエクアドルのガラパゴス諸島は、特異な生物相を持つ。孤島は外来種に脅かされることなく、独自の生態系を保ちやすい。海外なら他にもマダガスカル島、タスマニア島、ソコトラ島などが、日本なら小笠原島、西表島がよく知られている。

 インドネシアのスラウェシも、この島にしかない動物相が残っている島のひとつ。実に60パーセント以上の哺乳類が固有種である。しかし、この島がおもしろいのはそれだけではない。生物地理区が東洋区とオーストラリア区にまたがるウォーレシアに属するのだ。

 生物地理区を分けるウォーレス線は、イギリスの探検家ウォーレスが1868年に提唱した。西側を東洋区、東側をオーストラリア区に分けるウォーレス線は、元々はスラウェシ島の左、ボルネオ島との間を走っていた。ところが、ウォーレスはその後、境界線をスラウェシ島の右に引き直してしまうのである。ウォーレスとはまた別の観点から動物学者のウェーバーが1902年に提唱したウェーバー線は、スラウェシ島の右を走っている。

 1本の線ではっきりふたつに分けられるほど、物事は単純ではない。最初のウォーレス線とウェーバー線の間はウォーレシアと呼ばれ、東洋区とオーストラリア区が混じり合った地域とされている。スラウェシ島がアルファベットのXの形をしているのは、大陸移動の際、東洋区の島とオーストラリア区の島がぶつかり合ってできたためと言われている。

 こんな話を聞いているぶんにはおもしろいのだが、実際に野生動物を見に行くのは骨が折れる。朝早くオーストラリアのジャングルに、カモノハシという卵を産む哺乳類を見に行ったときのこと。蚊に食われながらも微動だにせず、息を潜めて待つこと5時間。ようやく見られたのは、水面に浮かび上がってきたカモノハシの背中だけ。自然な姿の野生動物を見ることは、かくも難しいものなのかと空しくなってしまった。

 エクアドルのガラパゴスには、海イグアナと陸イグアナ、そしてその間に新たに生まれたハイブリッドイグアナが生息する。しかし、これは専門家に説明してもらって初めてわかることなのであって、素人目にはどれも同じイグアナにしか見えないのである。同じことは南米の陸の孤島、ギアナ高地にもあてはまる。ギアナ高地の植物は75パーセントが固有種であるが、日本人ツアーに同行した植物学者はこう言ったのだ。「どれもこれも見たことのない種類ばかりです」専門家にさえ解説できないものが、素人にわかるわけがない。

 オーストラリアのカモノハシに懲りたはずなのに、スラウェシ島では早起きをしてジャングルをかきわけ、タルシウスを見に行った。タルシウスの別名はスラウェシメガネザル。世界最小のサルには貢ぎ物として彼らの好物であるバッタを用意していったにも関わらず、やはり空振りに終わってしまった。一介の旅行者がたった半日を捧げる程度の苦労が、野生動物相手に報われることはまずないのであろう。

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片岡恭子(かたおか・きょうこ)
1968年、京都府生まれ。同志社大学文学研究科修士課程修了。同大学図書館司書として勤めた後、スペイン留学。さらに3年に渡って中南米を放浪。ベネズエラで不法労働中、テレビ番組をコーディネート。帰国後、NHK『地球ラジオ』にカリスマバックパッカーとして出演。下川裕治氏が編集長を務める旅行雑誌『格安航空券&ホテルガイド』で「バッカー列伝」を連載開始。その後まもなく日本語講師アシスタントとしてフィリピンに滞在したのがきっかけとなり、『地球の歩き方 フィリピン』を編集、執筆する。現在は雑誌記事やガイドブックなどを執筆するかたわら、阿佐ヶ谷LoftAで『旅人の夜』という旅イベントを主催している。2011年現在、44ヶ国を歴訪。世界遺産にも詳しく、2007年8月に放送されたNHK『プレムアム10』「プロが選ぶ世界遺産ベスト30」に出演し、フィリピンの棚田を紹介した。中南米、フィリピンを得意とする秘境者(ひきょうもの)として活躍中。

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